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 米澤穂信氏の連作ミステリ『追想五断章』について考察してみる。
 この記事を書いている時点で、小説すばる誌のこの連載は最終回を残すのみとなっている。
 すべてのピースがそろったのかどうかはわからないが、大まかな推理が可能な段階にきていることは間違いないと思う。
 よってこの記事は多分にネタバレを含む。
 基本チラシの裏なのでご覧になる方が居るとも思えないが一応配慮して追記に記すこととする。

 プレ最終回である第六回だが、今回のラストで既に問題となる事象の解決が一段落ついている。
 叶黒白が小説を書いた理由、五つの断章が持つそれぞれの意味、「アントワープの銃声」の詳細。最後の一篇の在り処ははっきりとしないものの、芳光が可南子の依頼を続ける理由はほぼなくなった。これで物語の幕が下りたとしても、細かいことを気にしないおおらかな人間ならば笑顔で本を閉じるだろう。
 しかし、もちろんこれは米澤氏のミステリであるからそんなことがあろうはずがない。
 最終回では今回、主人公によって導き出された推理とはまるで逆の真相が顔を出すことだろう。この物語がミステリである限り、そうでなくてはならない。

 なにも作者に対する根拠のない信奉でこれを言っているのではない。前回までに物語の中でちりばめられた伏線が、この物語が簡単には終わってくれないことを言下に告げているのだ。

 まずは今回明かされたもっとも重要な要素、すなわち『アントワープの銃声』記事への反駁としての五断章を整理してみよう。

断章タイトル 1 リドル 2 結末 3 『アントワープ』事件の真相

『眠り姫』 1 娘は寝ていたか? 2 明け方、女の焼死体が見つかった(娘は寝ていた) 3 可南子は眠っていた

『転生の地』 1 死体に傷がつけられたのは死の前後どちらか? 2 幼子の命まで奪われる(=死後に傷をつけた) 3 拳銃を発射したとき春美は首を吊っていた

『二通の手紙』 1 死んだのは夫か妻か 2 一刀のもとに夫の首は飛ばされた(=妻が手を下した) 3 春美は自殺した

『暗い隧道』 1 トンネルに罠はあったか? 2暗がりから女の子が現れた(=罠はなかった) 3 参吾は春美に駆け寄ることはできた

『雪の花』 1 ? 2 雪の中に眠っている 3 二人に愛が残っていたかは推して知るべし


 今回の解決編で示されたのはこんなところだろう。前回まで無秩序に積み重ねられた情報が見事パズルのピースとして形を成し、物語の結末という絵が浮かび上がる……と、そういうわけにはいかない。
 これはあらかじめ用意された偽の結末である。
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